ナイトスイミングは静かな夜にこそふさわしい
ダッシュボードには何年も前に撮った写真
裏返して置くとフロントガラスに陰影が浮かぶ
街灯を通り過ぎるたびに
写真は一瞬逆さに照らし出されて
それがかえって いっそう鮮明に映してくれる
水際にシャツを忘れてしまった
今夜の月は低い
ナイトスイミングは静かな夜にこそふさわしい
みんなわかってくれるだろうか
もうあの頃とは違う
捕まること 無謀さ 水への恐怖
裸でいてもわかりやしない
そんなものは消え失せて
やがて日常に置き換えられていく
ナイトスイミング あの夜を思い出している
九月はもうすぐで 月が恋しくなるんだ
もしも月がふたつあって
並んで軌道に乗って
いちばん美しい太陽の周りを回っていたとしたら?
澄みわたるほど張りつめた永遠の鼓動でさえも
ナイトスイミングを奏でることはできない
君を 僕は君をわかっているつもりだった
君を 僕は決めつけていた
君は 僕を君はわかってくれていると思っていた
息をひそめて静かに笑う僕のことを
ナイトスイミング
写真が映し出すもの
通り過ぎゆく街灯が記憶を呼び醒ます
ナイトスイミングは静かな夜にこそふさわしい
静かな夜にこそふさわしい